映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』より
原題『Doctor Strange in the Multiverse of Madness』
映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』の終盤、スカーレット・ウィッチが別次元のワンダを襲うシーンがありました。そのとき、別次元のワンダのある一言でスカーレット・ウィッチは暴走をやめます。
その一言が意訳されていました。本当の意味が分かると、その言葉に込められたメッセージがより伝わると思います。子を思う母の気持ち、ワンダの優しい気持ちが伝わってきます。
映画『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』
別次元のワンダのセリフ
別次元の変異体ワンダ(エリザベス・オルセン)
They’ll be loved.
字幕:私が愛します
訳 :子供たちは愛されるわ
シーン:映画の終盤、別次元のワンダがスカーレット・ウィッチに『私が愛します』と伝えたシーンです。
しかし、英文を見てみると受動態(受け身)になっているのが分かります。これはとても面白い英文になっていて、同じく母親であるスカーレット・ウィッチに対しての、変異体ワンダの思いやりが含まれています。
これから英語の解説と共に、詳しく別次元のワンダの気持ちも紹介するつもりですが、簡単に込められた思いだけを紹介すると、このセリフ『They’ll be loved.』には『子供たちは私だけでなく、スカーレット・ウィッチ、あなたからも愛されているのよ』というメッセージが込められています。
別次元のワンダの『母親が子供を愛する気持ち』、そしてスカーレット・ウィッチに対して『私も同じ気持ちよ』と同情する気持ちが伝わってきます。
ちなみに予告を見直していたら、このシーンが写っていて驚きました。
能動態と受動態
日本語字幕の『私が愛します』をそのまま英語に直そうとすると能動態の文になります。目的語を補うと『私が子供たちを愛します』となるでしょう。それをふまえて、日本語から英語に置き換えると、以下のような文になるでしょう。
・能動態
I will love them.
訳:私が子供たちを愛します
では、この能動態の文『I will love them.』を受動態の文に書き換えてみましょう。
・受動態
They will be loved by me.
訳:子供たちは私に愛されるわ
もとの英語では『They’ll be loved.』でしたね。もとの文とは『by me』の有無が違います。受動態では『by 行為者』の形で、それを誰が行ったかを表すことができます。
受動態の面白いところ!
『by 行為者』の部分は省略できる!なくてもOK!
例文を使って『by 行為者』の部分は省略できる!なくてもOK!だというところの面白さを紹介します。
例文
・能動態
Bucky killed Tony’s parents.
訳:バッキーはトニーの両親を殺した。
・受動態
Tony’s parents were killed by Bucky.
訳:トニーの両親はバッキーによって殺された
どちらも同じ意味になりますね。では、受動態の英文から『by 行為者』をなくしてみましょう。
・受動態
Tony’s parents were killed.
訳:トニーの両親は殺された
どうでしょうか?『by Bcuky』がある文とない文では、全然意味が違いますよね。
バッキーの親友スティーブ・ロジャースだったら、どちらをトニーに対して言うと思いますか?真意を伝えないためにも『Tony’s parents were killed.』『トニーの両親は殺された』と言いたいのではないでしょうか?
別次元のワンダのセリフには『by 行為者』がない!
別次元のワンダ(エリザベス・オルセン)
They’ll be loved (by us).
字幕:私が愛します
訳 :子供たちは(私たちみんなに)愛されるわ
セリフには『by 行為者』がありませんでした。なので、おそらくなのですが『by us』『私たちによって』が省略されていて、あえて言わなかったのかもしれません。
この『us』には、別次元のワンダだけでなくスカーレット・ウィッチも含まれているのだと思います。また、父親であるヴィジョンも含まれていてもおかしくありません。
日本語字幕の『私が愛します』だと、そのセリフを言った別次元のワンダだけが子供を愛しているようなニュアンスになってしまいます。しかし、英文では受動態になっていて『子供たちは私たちみんなから愛されている』とも解釈できます。つまり、『あなたからも愛されているのよ』というニュアンスも含んでいると考えられます。そう考えると、すごくグッとくるセリフですよね。
最後に
『They’ll be loved.』には『by 行為者』がありませんでした。それがないことで『子供たちが私たちみんなに愛されている』ということを、別次元のワンダは伝えているのではないでしょうか。だから、スカーレット・ウィッチもこの言葉を聞いて、安心して手を引くことができたのだと思います。
受動態の表現であることから、別次元のワンダの『母親が子供を愛する気持ち』、そしてスカーレット・ウィッチに対して『私も同じ気持ちよ』と同情する気持ちも伝ってきて、涙しますね…
別の記事でも紹介していますが、この『They’ll be loved.』はサウンドトラックの曲名にもなっています。それだけ大切なメッセージだということですね。
これまで多くの『日本語からは分からない、英文から分かること』を紹介してきました。今回のセリフはその中でも上位に入であろう感動を含んだセリフでした。こういった違いに気付けたときに、英語を勉強してきて本当によかったと感じます。またこういった英語から分かる違いを見つけたら紹介したいと思います。
この記事を読んで、英語って楽しい!英語の勉強をしたくなった!って感じてもらえたら嬉しいです。
では、また英語解説の記事で会いましょう。
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参照:ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス
https://disneyplus.disney.co.jp/
参照:Marvel Studios’ Doctor Strange in the Multiverse of Madness | Official Trailer
https://youtu.be/aWzlQ2N6qqg
BD・DVD:シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ
https://marvel.disney.co.jp/movie.html
(参照2022/06/25)
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