映画『ブラックパンサー』(2018年)より
原題『Black Panther』
最初に
映画『ブラックパンサー』の最後、国王ティ・チャラの演説シーンのセリフを字幕、訳を比較します。
もとの英文と字幕、訳の違いや、意訳なのか誤訳なのかを見て行きましょう。
この記事を書いたのは、ブラックパンサー/ティ・チャラを演じたチャドウィック・ボーズマンの訃報があったからです。
彼とのお別れをするため、私自身の心の整理をするために1番心に残った演説シーンを解説します。
ファンの方に、この記事を読んでいただき、一緒に大好きな気持ちや悲しい気持ちを、チャドウィック・ボーズマンに伝えたい。
(2020/08/29)
ブラックパンサー/ティチャラの演説
1.私は国王ティ・チャラ
My name is King T’Challa… son of King T’Chaka.
字幕:私は国王ティ・チャラ ティ・チャカの息子で
訳:私の名前は国王ティ・チャラ 国王ティ・チャカの息子です。
I am the sovereign ruler of the nation of Wakanda.
字幕:ワカンダ王国の統治者となりました
訳:私はワカンダ王国の統治者です。
英語の解説
・My name is ~
意味:私の名前は~です
『My name is ~』と『I am ~』の表現で、『私は~です』と自己紹介ができます。
ただ、『My name is ~』の方が堅い、かしこまったニュアンスになります。なので、この演説のシーンのようなフォーマルな場では、より適した表現になります。
カジュアルな場では『I am ~』で大丈夫です。
アイアンマンの『I am Iron Man.』は記者会見での発言でしたね。
・注意したい名詞
sovereign:国王
ruler:統治者
nation:国家
2.ワカンダ史上初めて
And for the first time in our history…we will be sharing our knowledge and resources… with the outside world.
字幕:ワカンダ史上初めて 知識と資源を 世界の皆さんと分かち合います
訳:そして我が歴史上初めてのことです…我々は知識と、資源を分かち合っていきます…ワカンダの外の世界と。
英語の解説
・熟語 for the first time
意味:初めて
『the first time』だけで使うと、『初めて』という名詞として使うことができます。
・注意したい名詞
knowledge:知識
動詞のknow(知っている)が語源です。
resource:資源・リソース(ゲームとかで使いますね)
3.陰から見守るのはもうやめます
Wakanda will no longer watch from the shadows.
字幕:陰から見守るのはもうやめます
訳:ワカンダはもはや陰から見ることはしません。
We cannot. We must not.
字幕:これ以上傍観できない
訳:できないのです。してはいけないのです。
英語の解説
・cannotは1単語?
canの否定を表す場合は、2単語で『can not』ではなく、『cannot』と1単語にします。
それか短縮形の『can’t』を使いましょう。
4.我々から率先し 地球に生きる仲間を家族として大切にします
We will work to be an example of how we… as brothers and sisters on this earth… should treat each other.
字幕:我々から率先し 地球に生きる仲間を家族として大切にします
訳:私たちは、模範となりたい。地球にいる私たちが、どのようにお互いを兄弟姉妹のように扱うべきなのか。
英語の解説
・不定詞の副詞的用法
意味:~するために
to be an example:模範となるために
・倒置
セリフが倒置になっているので分かりやすく直します。
we… as brothers and sisters on this earth… should treat each other.
we should treat each other as brothers and sisters on this earth.
訳:地球にいる私たちが、お互いを兄弟姉妹のように扱うべきだ
5.もしこのまま対立の風潮が続けば 人類は存続も危うい
Now, more than ever… the illusions of division threaten our very existence.
字幕:もしこのまま対立の風潮が続けば 人類は存続も危うい
訳:今まで以上に、考え方の相違がまさに私たち存在そのものを脅かしています。
英語の解説
・熟語 now more than ever
意味:今まで以上に
・注意したい単語
名詞 illusion:幻影、幻
名詞 division:分裂
動詞 threaten:脅かす
規則動詞でthreaten-threatened-threatened
・訳し方
『the illusions of division』をそのまま訳すと『分裂の幻影』となってしまいますが。
文脈から『考え方の相違』と訳してみました。
・very + 名詞
意味:まさに
形容詞や副詞を強調するveryですが、名詞を修飾することもできます。
6.実際には違いより 共通点の方が多いのです
We all know the truth.
字幕: 訳されていませんでした
訳:私たちは皆、真実を知っています。
More connects us than separates us.
字幕:実際には違いより 共通点の方が多いのです
訳:私たちをへだてるものより、私たちを繋ぐものの方が多いのです。
英語の解説
・allの使い方
『主語はすべて(みんな)』という意味で使う場合は、『all』の位置にルールがあります。
be動詞の場合:be動詞の後
一般動詞の場合:一般動詞の前
助動詞の場合:助動詞の後
We all know the truth.
セリフは『know』なので、一般動詞のルールで、一般動詞の前になっています。
・注意したい単語
動詞 connect:繋げる・関係がある
名詞のconnectionの動詞です、『コネがある』のコネとは、コネクションのことですね。
動詞 separate:引き離す
名詞のseparator『セパレーター』を聞いたことがある人もいるのでは、物を分けたりする道具です。
・分かりやすく解説
More connects us than separates us.
字幕:実際には違いより 共通点の方が多いのです
訳:私たちをへだてるものより、私たちを繋ぐものの方が多いのです。
このセリフはこちらの英文を短縮したと考えると分かりやすいです。
There is more that connects us than there are things that separate us.
私たちを繋ぐものの方が多いのです、私たちをへだてるものより。
またはこういった文です。こちらだとセリフと同様に”separates”と三人称単数の”s”が付きます。
There is more that connects us than what separates us.
私たちを繋ぐものの方が多いのです、私たちをへだてるものより。
7.危機に瀕した時 賢者は橋をかけ 愚者は壁を造ります
But in times of crisis… the wise build bridges… while the foolish build barriers.
字幕:危機に瀕した時 賢者は橋をかけ 愚者は壁を造ります
訳:しかし危機の時、賢者は橋を造り、愚者は壁を造る。
英語の解説
・the + 形容詞
意味:~な人たち
the wise:賢い人たち
the foolish:愚かな人たち
おまけ
名詞:fool
形容詞:foolish
8.他者を受け入れ 慈しみ合いましょう
We must find a way… to look after one another… as if we were one, single tribe.
字幕:他者を受け入れ 慈しみ合いましょう 人類は 1つの民族として生きるのです
訳:私たちはあたかも1つの民族であるかのように、互いを支え合う方法を見つけなければなりません。
英語の解説
・名詞 way
意味:方法、道
道という意味で覚えている方が多い印象があります、このセリフの様に方法という意味でも使うので覚えておきましょう!
・不定詞の副詞的用法
意味:~するために
to look after one another:お互いを支え合うために
・熟語 one another と each other の違い
意味:お互い
どちらも意味が『お互い』ですが、この2つにあまり違いはなく、同じ意味だと覚えてしまいましょう。
・熟語 look after
意味:世話をする・支え合う
・仮定法 as if ~
意味:まるで~であるように
~部分には、仮定法過去(まるで~であるように)と、仮定法過去(まるで~であったかのように)の両方が入ります。
おまけ 大使『農業国が何を分かち合うと?』
With all due respect, King T’Challa… what can a nation of farmers have to offer the rest of the world?
字幕:失礼ですが 農業国が何を分かち合うと?
訳:お言葉を返す用ですが、国王ティ・チャラ。農業従事者の国が、世界の国々に対して何を提供できるのですか?
この大使のセリフの後に、ワカンダ一同と、エヴェレット・ロスがニヤリと笑って幕が閉じる。
英語の解説
・慣用表現 with all due respect
意味:お言葉を返す用ですが、失礼ですが
直訳すると『すべての当然与えられるべき敬意で』と訳されます。
敬意を払って相手の言い分に対して、反論するときの決まり文句です。
しっかり、相手に敬意を払っているので丁寧な表現になっています。
・熟語 rest of the world
意味:世界の国々
最後に
ブラックパンサー/ティ・チャラの演説の英文・字幕、訳でした。
この演説シーンのどのセリフも言葉も人の心を動かすものだと思います、この演説を見て清々しい気持ちになって映画館から帰ったのを今でも昨日のように覚えています。
本当に素晴らしい映画・感動をありがとう。
ブラックパンサーを演じたチャドウィック・ボーズマン、ご冥福をお祈りいたします。
ワカンダフォーエバー!
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DVD・BD:ブラックパンサー
https://marvel.disney.co.jp/movie.html
(参照2020/08/29)
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