映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』の最後のシーン。
キャプテン・アメリカはインフィニティ・ストーンを元の場所に返した後、自分の人生を生きました。
このシーンのキャプテンのセリフが、日本語字幕と英語の訳とで大きく異なるものでした。
英語を読むことで、キャプテン・アメリカが自分の人生を歩んだ本当の理由が分かります。
そして、どうして日本語字幕では誤訳になってしまったのか、その理由は過去のある映画にありました。
映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』より
『自分の人生を生きてみるのもいいかと』
キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースのセリフ
I’ll try some of that life Tony was telling me to get.
字幕:自分の人生を生きてみるのもいいかと
訳:トニーがやってみろと、言ってた人生を送ろうと思ったんだ
シーン:映画の最後、インフィニティ・ストーンを戻しに行ったキャプテン・アメリカは戻ってきませんでした。
その場にいたバッキーとサムは近くにいた老人に気づき、彼に声を掛け、その老人がキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースだと気付きました。
この時、スティーブは『石を元に戻して、ふと思ったんだ。自分の人生を生きてみるのもいいかと。』と言っています。
しかし、英語には『Tony was telling me to get』『トニーがやってみたらどうだと私に言った』とあります。
このことから、スティーブはトニーの一言があったからこそ、自分の人生を送ろうと思ったと分かります。
字幕にはトニーの文字はなく、これだとスティーブが1人で決断したようにも感じてしまいます。
英語の解説
・関係代名詞の目的格
I’ll try some of that life (that) Tony was telling me to get.
名詞部分のlifeを関係代名詞部分の (that) Tony was telling me to getが修飾しています。
life:人生
(that) Tony was telling me to get:トニーが私にやるように言っていた
関係代名詞の目的格の場合、thatは省略できます。セリフでは省略されています。
伏線:映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』より
『君にもできる』
キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースのセリフ
The simple life.
字幕:素朴な生活
アイアンマン/トニー・スタークのセリフ
You’ll get there one day.
字幕:君にもできる
訳:いつか君にも必ずできる
シーン:映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』の最後、戦いが終わった後です。スティーブとトニーが2人で今後のことを話しているシーンです。
ここで、トニーはスティーブに対して『The simple life』を君も送れると言っていますね。この時lifeを『生活』と字幕では訳していますが、lifeには『人生』という意味もありますね。映画『アベンジャーズ/エンドゲーム』を見た後だと『素朴な生活』ではなく『素朴な人生』とも訳せそうですね。
このトニーの『いつか君にも必ずできる』の一言が、スティーブの自分の人生を送るという決断の後押しになっています。
おそらく、エンドゲームの字幕に『トニーが言ったから』という字幕が入らなかったのは、伏線が『エンドゲーム』ではなく『エイジ・オブ・ウルトロン』にあったからなのかもしれませんね。はたまた、翻訳するときの字幕の文字数の関係かもしれません。
さらに、このトニーのセリフで注目してほしいことが2点あります。英語の意味を知ると、トニーがこのセリフにどんな思いを込めていたのかが分かります。
英語の解説
・willの意味
トニーのセリフに『You’ll』(You will)があります。
このwillは学校だと『~するつもり』と習うと思います。しかし、このwillには他にも意味があり…
『100%必ずする』と言った意味があります。そう!トニーが言った通り、スティーブは『自分の人生を送ること』ができたのです。
・one day
意味:いつか
『いつか』と言う意味を持つフレーズというと『someday』もあげられると思います。しかしこの2つには違いがあります。
one day:いつか必ず
someday:いつか(漠然とした感じ)
トニーはセリフに『one day』を使っていますね。このことから『スティーブも必ず人並みの人生を送れるんだ』と分かっていたのでしょう。
最後に
MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)を見てきた方は感じると思いますが、トニー・スタークとスティーブ・ロジャースはこの10年間、多くの戦いを共にしてきました。
映画『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』では対立をし、もう友ですらなかった時期すらあります。そんな2人はいつも物語の中心にいたと思います。
今までずっと国や世界のために戦い、自分を優先してこなかったスティーブ・ロジャース。その彼が自分のために『自分の人生を送る』という行動しました。この行動の背景にはトニーの一言があるのだと思います。これが有るのと無いのとでは雲泥の差があると思います。
ファンの方には、キャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャースが『自分の人生を送った』のは、トニーの一言があったからだと言うことをぜひ知ってほしいです。
この内容をツイートしたところ、多くの方からこの字幕と英語の違いについて意見を頂けました。
『トニーの一言があったから、キャップは行動したんだ!』と驚いていた方もいました。皆さんはこの違いを知り、どう感じましたか?よろしければ、感想などをコメント欄にお書きください。
その時のツイートはこちら
#映画と英語
キャプテンがエンドゲームで自分の人生を歩んだのはトニーの1言があったから
日本語字幕が違いますキャプテン・アメリカ/スティーブ・ロジャース
I'll try some of that life Tony was telling me to get.
訳:トニーがやってみろと、言っていた人生を送ろうと思った pic.twitter.com/jsvbAlLDn0— マーベル映画×英語塾 (@Ironman_English) July 23, 2020
このように映画では時々、日本語字幕と英語の訳に違いがあることがあります。
今後も日本語字幕と英語の訳を比較して、英語の訳が面白かったり、意外な発見があったりする例を紹介していきたいと思います。
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DVD・BD:アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン
DVD・BD:アベンジャーズ/エンドゲーム
https://marvel.disney.co.jp/movie.html
(参照2020/08/12)
キャップが自分の人生を生きると言うシーンはなんとなく腑に落ちずにモヤモヤしてましたが、トニーの一言があったこと、また、その伏線がEoUにあったこと、と言うことを聞いて感動しました!
このような製作意図があったことを知れてとても感謝です!
コメントありがとうございます!
私も、どうしてキャップが自分の人生を?と思いましたが、元の英語のセリフを知って納得をしました。
トニーがいたからキャップも自分の人生を…って思うとすごく感動します。
知っていただけて良かったです!
またこういった英文を見つけたら記事にしたいともいます。