映画『アベンジャーズ』(2012年)より
原題『Marvel’s The Avengers』
トニー・スターク/アイアンマンは敵味方問わず、他のキャラクターに変わったあだ名・呼び名をよくつけますよね。今回は多数のヒーローが集まった映画『アベンジャーズ』で、トニーがキャラクターにつけたあだ名を紹介&元ネタなどを解説していきます。
実は英語ではあだ名で呼んでいても、字幕では訳されていないことがけっこうあります。字幕には文字数制限があったり、元ネタがマニアックで伝わりにくかったりと色々理由はあるのでしょうが、ちょっと残念ですよね。
ちなみに字幕で訳されていなくても、日本語吹き替えだとちゃんと訳されていることが多いです。しかも、元ネタが分かりにくいものは日本人が分かりやすいようにうまく改変されています。秀逸な訳が多くて面白いので、今回は吹き替えも紹介していきたいと思います。
映画『アベンジャーズ』
『トナカイ・ゲーム』
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
Make your move, Reindeer Games.
字幕:どうする? トナカイ野郎
吹替:さあ どうする? トナカイくん
訳 :動いてみろ トナカイ・ゲーム
英語の解説など
Reindeer Games:レインディア・ゲーム(トナカイ・ゲーム)
クリスマスに行うパーティーゲームの名前で、同名の映画もあります。ロキの兜に角が生えていて、トナカイみたいだと言っているのでしょう。
こちらは字幕・吹替共にちゃんと『トナカイ』という言葉を使っていますね。
make a move / make one’s move
意味:行動を起こす、アクションをとる
『ロック・オブ・エイジズ』
スティーブ・ロジャース / キャプテン・アメリカ(クリス・エヴァンス)
I don’t like it.
字幕:何か変だ
吹替:腑に落ちない
訳 :腑に落ちないな
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
What? Rock of Ages giving up so easily?
字幕:簡単に降参したから?
吹替:コスプレ野郎 が簡単に降参したから?
訳 :何だ? ロック・オブ・エイジズ が簡単に諦めたからか?
英語の解説など
Rock of Ages:ロック・オブ・エイジズ
ロック・ミュージカルのタイトルです。ロキが奇抜な格好をしているので、ミュージカルのようだと言っているのでしょう。
こちらは字幕だと全く訳されていません。ミュージカルのタイトルを知らない人には伝わらないので、仕方ないのでしょう。
吹替だと『コスプレ野郎』と言って、ちゃんとロキの格好に触れているのがいいですね。これならミュージカルのタイトルを知らなくても、トニーがロキの格好をいじっているのが分かりやすいです。
I don’t like it.
意味:腑に落ちない、気に食わない
好ましくない状況や嫌な予感がするときに使えるフレーズです。
『キャプテン・アイス』
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
You might have missed a couple of things.
字幕:最近の世情にうといな
吹替:ものを知らないね
訳 :君はちょっとしたことを見逃してるかもしれないな
Doing time as a Capsicle.
字幕:氷漬けだったから
吹替:長年 キャプテン・アイス だったから
訳 :キャプシクル として過ごしていたから
英語の解説など
Capsicle:キャプシクル
『captain(キャプテン)』と『popsicle(ポプシクル/アイスキャンディ)』を組み合わせた造語です。キャップが氷漬けになっていたことをいじっていますね。
字幕では単純に『氷漬け』となってしまっていますが、吹替では『キャプテン・アイス』と、元の英語に寄せた言い方になっていますね。日本人にはpopsicle(ポプシクル)がアイスキャンディのことだと分かりにくいので、いい訳し方になっていると思います。
a couple of
意味:2つの、少数の
couple(カップル)に『2つ』という意味があり、そこから転じて『2、3の』『少数の』といった意味合いになっています。『a few』とほぼ同じ意味で使えます。
『シェイクスピアくん』
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
Shakespeare in the park?
字幕:シェイクスピア 芝居?
吹替:シェイクスピアくん か?
訳 :シェイクスピア・イン・ザ・パーク か?
Doth mother know you wear-eth her drapes?
字幕:母上の垂れ布を無断借用か?
吹替:そなたがまといしは母上の衣か?
訳 :母上はそなたが彼女の衣を着ていることをご存じか?
英語の解説など
Shakespeare in the park:シェイクスピア・イン・ザ・パーク
セントラルパークで毎年開催される無料の演劇イベントです。ロキのときと同じく、ソーの格好が演劇に出てきそうだといじっているのでしょう。
さらに続けて、ソーのマントを『母親から借りたのか?』と、わざわざ現代英語ではなく古語を使って演劇風に言っています。かなり煽りまくっていますね。
古語:doth, wear-eth
現代英語:does, wears
3人称単数現在形に付ける『-s, -es』が、古語では『-eth, -th』になっています。日本語も古文・古語が現代語と違うように、英語でも古語は現代語との違いがあります。
『ポイント・ブレイク(サーファーくん)』
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
No hard feelings, Point Break.
字幕:悪気はなかった
吹替:怒るな サーファーくん
訳 :悪く思うなよ ポイント・ブレイク
You’ve got a mean swing.
字幕:お前はすごいよ
吹替:いいパンチだった
訳 :すごいスイングだったよ
英語の解説など
Point Break:ポイント・ブレイク
映画『ポイント・ブレイク』のことです。邦題は『ハートブルー』と、タイトルが変わっています。サーファーをテーマとした作品で、ソーの見た目がサーファーっぽくて映画の登場人物に似ているということで、こう呼んだのでしょう。
実は、映画『マイティ・ソー/バトルロイヤル』でトニーがソーを『ポイント・ブレイク(サーファーくん)』と呼んだことが活かされるシーンがあるのですが、字幕では全く訳されていないので、字幕だけで見ていた人には、このシーンが伏線なってることが分かりにくいと思います。そのシーンについては、この後紹介します。
『ポイント・ブレイク』は、邦題が変わってしまっているのでそのまま訳すのが難しいとはいえ、せめて吹替と同じように『サーファーくん』くらいは入れてほしかったですね。
スラング:mean
意味:すごい
meanは形容詞として使う場合『意地悪な、卑劣な』といった意味になりますが、スラングでは『すごい』といったいい意味で使うこともあります。
映画『マイティソー/バトルロイヤル』
ソー(クリス・ヘムズワース)
Point Break.
字幕:サーファーくん
吹替:サーファーくん
訳 :ポイント・ブレイク
クインジェット
Welcome, Point Break.
字幕:ようこそ サーファーくん
吹替:ようこそ サーファーくん
訳 :ようこそ ポイント・ブレイク
クインジェットの認証のために登録されているソーの名前が『ポイント・ブレイク(サーファーくん)』になっていました。ソーは他にも『ソー・オーディンソン、雷神、最強アベンジャー』などと言いましたが認証されず、トニーに『ポイント・ブレイク(サーファーくん)』と呼ばれたことを思い出して、認証に成功します。
『レゴラス』
クリント・バートン / ホークアイ(ジェレミー・レナー)
Can you give me a lift?
字幕:俺を上へ
吹替:運んでくれ
訳 :俺を持ち上げてくれないか
トニー・スターク / アイアンマン(ロバート・ダウニー・Jr)
Right. Better clench up, Legolas.
字幕:目を閉じてろ
吹替:ああ 飛ばすぞ 落ちるな
訳 :わかった しっかり捕まってろ レゴラス
英語の解説など
Legolas:レゴラス
映画『ロード・オブ・ザ・リング』に登場する弓使いのエルフのことです。ホークアイが弓使いなのでこう呼んだのでしょう。
字幕でも吹替でも訳されていませんね。他の映画の登場人物名なので、知らない人には伝わらないので仕方ないのでしょう。せめて『弓使い』と訳してくれていれば、呼びかけているのが分かってよかったかもしれませんね。
最後に
トニーがつけたあだ名をまとめると…
キャプテン・アメリカ:キャプシクル(キャプテン・アイス)
ソー:シェイクスピア、ポイント・ブレイク(サーファーくん)
ロキ:トナカイ・ゲーム、ロック・オブ・エイジズ(コスプレ野郎)
ホークアイ:レゴラス
といった感じですね。1人に1つではなく複数回あだ名をつけられているキャラクターもいますね。
もちろん映画『アベンジャーズ』以外の作品でも、トニーはあだ名をつけまくっています。今後は他の作品もまとめていきたいですね。
今回まとめてみて気付いたことは、このあだ名が字幕だと訳されていないことが多い点です。せっかく面白いあだ名をつけているのに訳されておらず、気付けないのはちょっと残念ですよね。
また、吹き替えではちゃんと訳されていることに気付けた点は大きな発見でした。普段、映画は字幕で見ることが多いので気付けなかったのですが、けっこう秀逸な訳が多くて、字幕と吹き替えを比較してみるのも面白いなと感じました。
この記事を読んで、英語って楽しい!英語の勉強をしたくなった!って感じてもらえたら嬉しいです。
では、また英語解説の記事で会いましょう。
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(参照2021/09/15)
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